世界の果ての図書館で、勇者たちに本を授ける/あるいは、AVCCの取りまとめについて

最初にこれだけ言わせてほしい

 

 

 

 

 

 

 

今年のAVCC、癖が強すぎないか???

──取りまとめ歴2年目より

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

こんにちは。初めましての方は初めまして。7期のえっふぃです。

 

まずは自己紹介から。代表作は2019年駒場祭周遊『裏商店街 思い出通り』、そして謎解きゲームブック『東大×ナゾトキ×ゲームブック ハテナ王国の冒険 〜竜と魔法の書〜』の二つです。制作指揮を務めていました。

 

他にもデザイナーとして『COMMANDER.exe』『#アナビのエナジーを体感せよ』『カリトルリドル』の制作に携わりました。

note.com

最近だと『セント』のお手伝いをちょっとだけ。あとは内部の仕事を少々。非公式ではありますが、アドベントカレンダーの取りまとめもやっています。

AnotherVisionにいないときは経済学を勉強しています。好きなのはマクロ経済学。特に物価、金融政策、国際金融に興味があります。経済史も好きです。

経済学を勉強していないときはマーダーミステリーを遊んでいるか、Venus of TOKYOにいます。剣持、ドラゴ・ヴァルスローダ、セリア・ペネトレッタ、ヘンゼルあたりの名前にピンと来る方。感想戦しましょう。あと魔王富豪って素敵ですよね。

昨年・一昨年は試験勉強も兼ねて非常に読みづらい文章を書き上げました。今年も昨年同様に何かしら社会科学っぽい文章を書こうと思いましたが、ここ数日思うところがあったので別のテーマを選びました。

 

本稿では、「世界の果ての図書館で、勇者たちに本を授ける」というテーマについて掘り下げてみます。もっと平易な書き方をすれば、アドベントカレンダーの取りまとめをなぜ私がしているのか」というテーマになります。もしかしたらこのテーマを見てとあるアニメキャラクターを思い浮かべた人もいるかもしれません。答え合わせは後ほど。

 

免責事項です。本稿はあくまで一メンバーの意見にすぎず、AnotherVisionとしての意見、およびその他所属団体の意見を代表するものではありません。長い自分語りと思想の塊なので、苦手な方はそっと閉じてください。多少のわかりづらい表現や論理の飛躍は大目に見ていただけますと幸いです。

また、少々お堅い文章になってしまったので、少しゆるめの文章を読みたい方は脚注へどうぞ。 *1*2

 

それでは、本編に参りたいと思います。ちょっと長めかつ入り組んだ文章が多めですが、お付き合いいただければ幸いです。

 

#謎沼 を聞いて、ここ数年を振り返って

「総合芸術だと思っていて」

「こっからがスマブラだから」

「総合芸術感が、みんなで作っていく感がすごく強かったんだよね」*3*4

「今まさに動き出して欲しいし、動けるような環境になってきた」

 

AnotherVisionの遠い先輩と、AnotherVisionの後輩二人*5の音声を聞きながら、眠たい頭で訳もわからず涙を流していました。悲しさや悔しさといった負の感情による涙ではありませんでした。何かに突き動かされた、そう形容するのが一番適切かもしれません。

 

コロナ禍によって学生の生活はひっくり返りました。弊団体も例外ではありません。ふと振り返ってみると、ここ2年の間で私たちは新作の公演型コンテンツが作れていません。持ち帰り型のコンテンツやWebコンテンツは制作しましたが、公演は『近未来研究所Aether』『Revolver』などの過去のコンテンツを再演するのが精一杯でした。*6

 

対面での活動が大きく制限される中で、私たちは様々な課題に直面しました。既存のやり方ではノウハウの継承がうまく行かない。大学の施設が使えなくなり、場所を確保しなければならない。そして何より、作りたいものが作れない。

 

AnotherVisionは、技術とエネルギーを持て余す状態が続きました。

 

AnotherVisionの立ち位置の揺らぎ

コロナ禍は、AnotherVisionにアイデンティティ・クライシスをもたらしたのかもしれません。といっても、私たちを襲ったのは明確な危機感ではなく、閉塞感、諦め、先行きの見えなさ、ぼんやりとした不安といった感情でした。世の大人たちが戸惑い、迷う中で、私たちも同じように迷いました。制作や団体のあり方について少し立ち止まって見直す人も増えました。

しかし、AnotherVisionのあり方が改めて問われるようになったのは、コロナ禍の影響だけではないのかもしれません。じわじわとAnotherVisionのあり方に影響した別の要因があったと考えられます。それは「謎解き制作への入り口の多様化」です。

 

以前と比べて、現在では謎解き公演を打つまでのハードルは少しずつ下がっているように見えます。コロナ禍による影響を除けば、制作団体の立ち上げや自主制作の発表について様々な前例が増える中でより公演が打ちやすくなっているのでしょう。一枚謎やLINE謎であれば、個人での発表はかなり容易になりました。

個人での制作が容易になるにつれて、弊団体の従来の意義は徐々に弱まってしまいます。以前は学生団体の中ではAnotherVisionがある意味特権的な強さを持って公演が制作できていましたが、今やその特権的な立ち位置は揺らぎつつあります。弊団体のモットーは「世界に謎を仕掛けます。」ですが、今となっては世界に謎を仕掛ける “だけ” であればAnotherVisionに入らなくても可能になっているのかもしれません。

 

コロナ禍、そして謎解き制作への入り口の多様化を受け、AnotherVisionの従来の立ち位置はじわじわと揺らぎました。

"主人公を導く司書を務めていた賢者"

ここで、話題を大きく変えて、メテオラ・エスターライヒというキャラクターを紹介したいと思います。アニメ『Re:CREATORS』に登場するメインキャラクターのうちの一人です。

recreators.tv

アニメ『Re:CREATORS』は「アニメやゲームのキャラクターが現実世界に登場したら」というテーマを扱っています。そのため、多数の作中作が登場します。メテオラ・エスターライヒはその作中作の一つ、RPG『追憶のアヴァルケン』のNPCです。彼女はとある事件をきっかけにゲームの世界から現実世界に来てしまいます。その後は主人公を補佐する名脇役として大活躍します。

作中作『追憶のアヴァルケン』では、長い冒険の旅の終盤に差し掛かったところに図書館が出現します。その図書館の司書がメテオラ・エスターライヒであり、彼女はプレイヤーにアイテムを授ける役割を担っています。作中で彼女が披露するずば抜けた洞察力や知識は、司書としての経験からくるものなのでしょう。

 

なぜ唐突にメテオラ・エスターライヒを紹介したのか。それは彼女の物語中の役割に、AnotherVisionの存在意義、そしてAnotherVisionの中における私の役割の理想像を見出したからです。長い冒険の旅の果てに図書館があり、そこにあるアイテムが勇者に授けられる。この構造から見出した私の役割の理想像とは「冒険の旅の果てにある図書館を整理し、維持して、そこにあるものを勇者に渡す」ことでした。そしてAnotherVisionの存在意義は、この冒険の果てにある図書館の存在意義に例えられます。

勇者から司書へ

これまでの私は勇者としてコンテンツの制作に携わりました。学生、そしてコンテンツ制作という長い旅を通じて、多くを経験させていただきました。そしてコロナ前のAnotherVisionを知り、コロナ禍による変容を直接目にしました。例年通りすら満足に知らないまま、例年通りでは通用しない環境で育ちました。すでに先輩たちによって開拓された世界があることを知りながら、別の道を開拓しなければならなかったのです。

しかし昨年後輩ができ、そして今年は後輩の後輩ができました。人生の大先輩たちに比べれば高々二世代分の後輩にすぎませんし、団体の中でもOB・OGの方に比べれば後輩の数は少ないかもしれません。されど、二世代分の後輩。ここまでくると否が応でも先輩として振舞う機会は増えていきます。そして先輩の宿命として、後輩に道を譲りながら、先輩として何をするか、あるいは何をしないか、についてより正確な答えを出す必要があります。

 

果たして私が得たものが将来の勇者にどの程度意味を持つのか。この問いは、後世の勇者たちが活躍するまで答えが出ない問いです。加えて、弊団体は非常に優秀な、頭の回る後輩が毎年入ってきます。私以上の洞察力やコンテンツに対する解像度・知識を持つ後輩も珍しくありません。*7*8彼らにとっては、私の存在そのものが邪魔となりえます。しかも、仮に私が邪魔であったとしてもその情報は上下関係の圧力によって私の耳に入りにくいものになります。

 

他方で、私が先輩たちが得たものから多くを学んだことは確かです。*9*10先輩たちの全てが記録されていたとは思いませんが、記録されたものには何かしら記録されるに足るものがあると考えています。さらに、過去のコンテンツ、そして過去の謎解きの世界の延長線上に現在のコンテンツがあり、現在のコンテンツは将来のコンテンツに対する姿勢に少なからず作用するとも考えられます。

 

先輩から学んだ後輩としての自分と、後輩に道を譲らなければならない先輩としての自分。二つの立場の間で折り合いをつけた結果として、「司書」という役割を理想として掲げるようになりました。一つの情報源として、必要に応じて知っているものを開示し、必要がなければしまっておく。既存の知を整理する。そして、その知を記録し、保存する。これらの役割が、私の団体内での最後の一仕事になりそうです。

世界の果ての図書館で、勇者たちに本を授ける

AnotherVisionの従来の立ち位置の揺らぎ、そして私の「司書」としての役割。大きく異なる二つの主張を結びつける大きな流れとは、「図書館と司書の存在がAnotherVisionの立場を形作っていく」という主張です。

 

謎解き制作への参入障壁が低くなる中で、AnotherVisionが謎解きの世界で何かしら意味を持つとすれば、それは過去の制作物と制作経験に裏打ちされた、団体に共有される知に根差すものになるでしょう。ノウハウに限らず、価値観、思考体系、趣味嗜好を含めた幅広い意味での過去の軌跡の先に、団体のアイデンティティが成立していると考えられます。そしてその知は、記録され、整理され、保存されることによって価値を生み出します。過去の勇者たちが自ら開拓した道を見直し、思考過程や経験を整理し、団体に還元する。整理された知を必要に応じて利用しながら、次の勇者が新たな道を開拓する。この繰り返しが可能になることで、団体が存在意義を持つのです。これは、過去の勇者が記録したものを図書館に納め利用可能なものにする構造と似ています。

 

この図書館と司書の出現は、暗に勇者の出現を所与としています。毎年何かしらの旅に挑む勇者たちが現れ続けることで、AnotherVisionの知のプールがじわじわと拡大していくのです。*11*12

 

「世界に謎を仕掛けます。」に止まらず、「世界に謎を仕掛け続けます。」を目指した時に、長い時系列の中でAnotherVisionが団体として力強いプレゼンスを持ちます。AnotherVisionは謎解きコンテンツに関する知識・ノウハウを集約し、世界に謎を仕掛け続けられるようにするための装置として機能している、あるいは機能すべきなのかもしれません。*13

 

で、なぜ私がアドベントカレンダーの取りまとめをしているのか。それは、AnotherVision Countdown Calendarは、図書館の一種だと考えているからです。ここには過去の勇者たちが編纂した資料があり、将来の勇者たちが自由に閲覧できるようになっています。*14謎や制作についての思考過程を記したものもあれば、趣味を語ったものもあります。それらは全て過去の団体の一面を描くものであり、団体のアイデンティティの形成に寄与するものです。非公式の仕事でありながら取りまとめをやっている理由は、AVCCが団体のアイデンティティをより強固にすると考えているからです。*15*16

 

おわりに

複雑なことを複雑に書いてしまったので、少し整理して終わります。

 

コロナ禍や謎解き制作の大衆化でAnotherVisionの立ち位置が揺らぐ中、団体での経験を各メンバーが記録し、保存し、共有することで、AnotherVisionの組織としてのアイデンティティがより強固なものとなる。その記録を将来のメンバーが目にし、利用することで、AnotherVisionは世界に謎を仕掛け続けられるようになる。これらの主張を踏まえた私の仕事とは、AnotherVisionの一員として記録を団体に適切に還元することである。

 

こんなところですかね。

 

最後に、少し勧誘を。

過去の勇者たちへ。未来の勇者たちのために、もうちょっとだけ図書館を充実させてみませんか?

現在の勇者たちへ。AnotherVisionには知のプールだけでなく、技術職という強力な武器や、一緒に冒険に出られる仲間が揃っています。もう少し大きな冒険の旅へ出てみませんか?

未来の勇者たちへ。私たちと一緒に、世界に謎を仕掛け続けてみませんか?

 

まだ生まれぬあなたの世界はこれから幾万の作品、銀河の星々のような群に加わるべくきっとあなたを待っている。そのためにも研鑽を。

 

長い私の自分語りに付き合ってくださり、ありがとうございました。

 

おまけ:リンク集

AnotherVisionや、謎解きコンテンツに関する2020年までのAVCCの記事で、私が好きなものを貼っておきます。

<2017年>

avcc.hatenablog.com

avcc.hatenablog.com

avcc.hatenablog.com

avcc.hatenablog.com

<2018年>

avcc2018.hatenablog.com

avcc2018.hatenablog.com

avcc2018.hatenablog.com

 

<2019年>

avcc2019.hatenablog.com

avcc2019.hatenablog.com

avcc2019.hatenablog.com

avcc2019.hatenablog.com

avcc2019.hatenablog.com

<2020年>

avcc2020.hatenablog.com

avcc2020.hatenablog.com

avcc2020.hatenablog.com

avcc2020.hatenablog.com

avcc2020.hatenablog.com

 

*17

*1:さてさて。はてなブログの脚注は遊びがいがあることが知られていますが、今回も思う存分脚注で遊んでいきたいと思います。脚注では今シーズンのAVCCで僕が好きな記事を紹介していきましょう。なんせ僕は全部の記事に目を通しているので。手始めにこんな記事はいかがでしょう?僕は最初この記事を見た時に目を疑いました。

avcc2021.hatenablog.jp

*2:あとそろそろこの記事、アクセスできるようになってるかな。

avcc2021.hatenablog.jp

*3:総合芸術たる謎解き公演には、謎以外にも様々な要素が必要です。今年はイラストに関する記事が出ましたね。

avcc2021.hatenablog.jp

*4:舞台っぽい話であれば、こんな記事も読んでみると面白いかもしれません。

avcc2021.hatenablog.jp

*5:後輩二人の記事はこちらから。二人まとめて紹介したのには、ちょっとした理由があります。

avcc2021.hatenablog.jp

avcc2021.hatenablog.jp

*6:そう言えば同期が同じような課題感を抱いていたっぽいですね。

avcc2021.hatenablog.jp

*7:天才な後輩の記事その1。

avcc2021.hatenablog.jp

*8:天才な後輩の記事その2。

avcc2021.hatenablog.jp

*9:2年前の駒場祭で僕がお世話になったD監修の記事は……先輩、これ、なんですか?

avcc2021.hatenablog.jp

*10:同じく2年前の駒場祭のM監修をしてくださった先輩の記事は……先輩、これどういうことですか?

avcc2021.hatenablog.jp

*11:駒場祭で役職を持つのは、非常に勇気のいることです。『セント』のマネージャーを務めたijの記事はこちら。

avcc2021.hatenablog.jp

*12:同じく、『Qキング・アドベンチャー』でマネージャーを務めたソルトの記事はこちら。

avcc2021.hatenablog.jp

*13:続けることの偉大さは、トップバッターの時点で言及されていましたね。

avcc2021.hatenablog.jp

*14:どうやらAnotherVisionに入る前からAVCCの存在を認知していた人もいたようです。

avcc2021.hatenablog.jp

*15:取りまとめを2年連続でやった結果、心の中に僕を飼う人が増えました。僕を心の中に飼っている人その1。

avcc2021.hatenablog.jp

*16:その2。

avcc2021.hatenablog.jp

*17:さて。最後の脚注ぐらいはちゃんと脚注らしく使いましょうか。

僕はそれっぽいことをそれっぽくいうのが得意です。誇張と言い訳が得意です。なのでここに書かれていることは、本当に等身大の僕が書こうとしたのかもしれないし、9割誇張かもしれません。「世界の果ての図書館で、勇者たちに本を授ける」ことを本当に僕がモットーとしているのかは、僕にも分かりません。

あと冷静な頭で読み直すと、この文章ちょっと中二病ですね。2周ぐらい回って多分大学生っぽい。その点も加味すると、いよいよこの記事の内容が胡散臭くなってきます。

そして、先輩が記録を残すこと、これは自己顕示欲を満たす手段でもあります。本当に後輩や団体に還元しようとしているのか、はたまた自分の自己顕示欲を満たす手段として建前上「引き継ぎ」を行っているのか。この問いには答えが出ません。無意識のうちに自己顕示欲を満たそうとしているのかもしれない。意識されるのであればなんとかして排除できますが、無意識であれば排除は難しいですよね。僕は……自己顕示欲についてはわからないけど、出しゃばりなのは分かっています。分かっていながら変に首突っ込んだりするからタチ悪い。

 

ただ、僕がこの団体が好きであって、好きであるからこそ還元しようとしているのは事実らしいです。それを示そうとする上で自己顕示欲も混ざっているのかもしれません。

私が私として、確かに生きたという場所が、即ち世界。
だから私は、私のいた場所もこの世界も、愛している。

僕は天才たちが集まってくるこの団体が好きなんだと思います。彼らが活躍できるように舞台を整えたい、というのが僕の本音なのかもしれません。

 

そういえば、この記事を書いている間に後輩が同じような仕事をしようとしていることを知りました。もう僕の仕事もないのかもしれませんね。