音楽と、物語と、

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こんにちは。9期のAnnです。

さて、私の番が回ってきてしまいました。

とりあえず、自己紹介から始めましょうか。

 

名前:Ann*1

年齢:19歳

Twitter:@Mr_Ann3

謎解き歴:期間にして4年、実質は1年くらい?*2

得意なタイプの謎:論理パズル、伏線整理*3

苦手なタイプの謎:上記以外全部(解けないだけであって嫌いではない。)*4

謎解き以外の趣味:音楽*5、読書*6、マーダーミステリー*7

アナビで何してる?:主に文字を書くお仕事。ストーリーとか台本とか。Webと音楽を勉強中。あとは、いつかディレクター(制作指揮)をやってみたいですね。

 

こんなものでしょうか?特に特筆すべき特徴も面白味もないないただの凡人ですが...

…おっと、いけない。自嘲しがちなのは悪い癖です。

 

まえがきというかなんというか

ところで。

以前、私が身内用のアカウントでこんなツイートをしました。

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このAVCCのことなのですが、これが想像以上に人の目にとまってしまったんです。*8*9

自分で自分のハードルを上げてしまった。ああ、胃が痛い...

適当に今年の振り返りでもしとくか、と思っていたのに、そういうわけにもいかなくなってしまったので。

さて、何を書こうかね。

 

思案

テキスト書く人を名乗っているくらいだから、何かストーリーでも作るべきだろうか。といってもなあ…そう簡単にいい感じのストーリーが思いつくでもなし。どうしたものか。

そんなことを考えながら、私の浅い引き出しを引っ掻き回してみると。

出てきたのが、BGMでした。

BGMは、世界観の演出という点においてとても強い力を持っています。謎解き公演、マーダーミステリーに限らず、多くのエンタメにはBGMがつけられています。*10

 

つまりですね。この力をお借りしようと思ったわけです。

 

こうして、BGMから私が想像した世界観を、SS(ショートストーリー)として書いてみよう!という完全自己満足企画が生まれました。

 

今回使用させていただいたBGMは、フリーBGM製作者の「しゃろう」様のBGM。素敵なBGMをたくさん公開されている、すごい方です。今回取り上げた3曲以外にもいわゆる「神曲」がたくさんあるので、ぜひ聞いてみてください。

 

では、企画を始めていきましょう。稚拙な文ではありますが、お付き合いいただければ幸いです。

 

 

朝。

 

僕は、アラームの代わりに設定した楽しげな音楽で目を覚ました。

 

手の届く距離にあった携帯電話を手に取り、時計をみて———

——まずい、寝過ごした!

音を立てて飛び起きた。

 

約束の時間まで、あと1時間。

 

大急ぎで身支度を整え、昨日脱ぎ捨てた上着をつっかけ、家を飛び出す。

外は、よく晴れたいい天気だった。朝の秋風が少し冷たい。

深呼吸をすると、肺が新鮮な空気で満たされた。

歩道を歩きながら、イヤフォンを耳に挿す。流れてくるのはいつもの音楽。

人の少ない朝の通りに、音楽が作り出すささやかな一人の世界。毎朝のこの時間が僕のお気に入りだ。

ルーティーンってやつだろうか。僕は毎朝、いつも同じ音楽を聞く。こいつを聞かないと一日が始まらない気がする。

 

今日、違う曲を聴いてみようと思ったのは、ただの気まぐれだ。

 

たまにはそんな日があってもいいさ。なにせ、今日は特別な日なのだ。

いつもと違う曲。僕のひとりの世界の色が、ちょっとだけ変わる。不思議な気分だけど、悪くないな。周りに変に思われないように少しだけ、歩く足が弾んだ。

 

駅に向かう道すがら、いつもの自動販売機に、上着のポケットに仕込んでおいた100円玉を入れる。いつも通り、お茶が入ったペットボトルを買おうと思ったのだが。

イヤフォンから聞こえてくる、いつもと違う音楽がそうさせたのだろうか。普段は目に留めることのない小さな缶のサイダーが、不思議と目を引いた。

——もう10円、あったっけ?

 

約束の時間まで、あと30分。

 

駅のホームでさっき買ったサイダーを開ける。駅まで軽く走ったからだろう、炭酸が吹き出した。それだけならまだ良かったものの、焦って缶を落としたものだから大変だ。もう大惨事としか言いようがない。ああ、せっかく買ったサイダーが...

しかも、線路側に向かって転がっていく缶を慌てて追いかけていたら、そいつを踏んですっ転んだ。落ち着け!自分!

どうも浮き足立っているらしい。自分で言うのもなんだが、心ここにあらずって感じだ。

———まあ仕方ないさ。今日は特別な日なのだから。

 

約束の時間まで、あと15分。

 

電車を降りる。

改札を抜ける。

いつもと同じようで、いつもと違う。

今日は、特別な日だ。

 

約束の時間まで、あと5分。

 

泡立つ心、はずむ足取り [inspired by “しゅわしゅわハニーレモン350ml”*11]

 

 

 

 

月が綺麗な夜だった。

 

俺は、木が鬱蒼と茂る森の中、一際大きな木の下に横たわっていた。

傷だらけの体は弱々しく痩せ細り、もう立ち上がる気力も体力もない。

 

———人間から、あれだけ恐れられている存在の人狼である俺が、こんな姿になっちまうとはね。

 

そんなことを、自嘲気味に考えていた。

 

始まりは、ちょうど一年前。今日と同じように、月が綺麗だったのをよく覚えている。

俺は、ある山奥の、人狼が集まって過ごす里の一員だった。人から恐れられ、疎まれ、避けられる存在である人狼は、人に見つからぬよう山奥で集まって過ごす。俺がいた里の他にも、各地に同じような里があるという話を聞いたことがある。

なぜ、人間は人狼を恐れるのか。その理由は単純だ。

俺たち人狼は、人を喰う存在だからだ。

夜になると里を出て、山に迷い込んだ人間を攫う。人間の姿をし、正体を隠して人間を騙すこともある。そうして、里に人間を連れて戻り、その人間を喰うのだ。

別に人間を食わなきゃ死ぬとか、そういうわけではない。他のものを食べたって生きていける。ただ、人食いは人狼の習性だ。それを疑ったり、やめようとか言い出す奴は、俺の周りにはいなかったし、俺もそうだった。

——あの少女と出会うまでは。

 

彼女とは、前に俺が獲物を探しに行った時に、森の中で出会った。

道に迷っているようでもなく、不思議な雰囲気をまとっていた彼女に、俺は思わず話しかけていた。いつもなら獲物である人間と話すことなどないのに、だ。

「お前、こんなところで何してるんだ?」

そう言ってから、俺は自分の姿に気づいてしまった。周りが暗かったのもあって完全に人間に変身していたわけではなかったのだ。大きく鋭い爪を備えた獣の腕や、牙の並んだ口元を見て、彼女は驚いた様子を見せた。

逃げられるか、攻撃されるか。そう思っていた俺だったが、彼女の行動はそのどちらでもなかった。

「すごい。人狼って、本当にいたんだ!私の名前は■■■。あなたは?」

俺の姿を見て驚かないどころか、興味を見せた彼女に、俺の方が戸惑ってしまった。

 

里に帰った俺は、その日の不思議な出来事を思い返していた。

結局、彼女とは一晩話し込んでしまった。色々な話をした。

人間と、人狼という種族のこと。

彼女や俺の住む場所のこと。

 

なぜ、俺が彼女を喰おうとしなかったのかは、俺にもよくわからない。ただ、

「私は、人間と人狼はきっと仲良くできると思うんだ。君もそう思わない?」

という彼女の台詞が、不思議と頭から離れなかった。

 

彼女が人狼に襲われて死んだのは、その数日後のことだった。

俺の里の誰かが言っていた、「今日見つけた獲物」の特徴が、彼女と寸分違わず一致していた。

その話を聞いた俺は、何を考えたのだろうか。もう、よく覚えていない。

ただ、気づいた時には、俺は里を出ていた。

 

里を出たあとは、当てもなく歩き続けた。

“人間と人狼は仲良くできる”という彼女の声が、何度も頭の中で繰り返されていた。

彼女のことをたどれる記憶は、もうこの言葉しかない。

——この言葉に従って生きよう。彼女の望みを叶えるために。

 

それからは、人狼である俺を受け入れてくれる人間を探すため、旅を続けた。

だが、やはりそんな人間は見つかるはずもなく、俺は人間の集落を訪れるたびに、話す間もなく追い返された。ものを投げつけられたり、武器で追い払われたりすることも一度や二度ではなかった。

完全に人間に化け、取り入ることも俺にはできた。それに、十数人程度の人間なら、俺の力があれば簡単に無力化することだってできただろう。

でも、俺はどちらも選ばなかった。

ただ、人間たちの攻撃に、抵抗することもなく耐え続けた。

彼女のように、「人狼である俺」をそのまま受け入れてくれる人間が、きっとどこかにいると信じていたのだろうか。でも、そんな人間が現れることはついぞなかった。

それほどまでに、彼女は特異で、特別な存在だったのだ。

 

結局、何も変わらなかった。人間と人狼が仲良くするというのは、夢物語だったのだろうか。

心身ともに疲れ果てた体は、もうぴくりとも動かない。

 

もう、何も聞こえない。視界もぼやけてきた。

俺は、このまま終わるのか。

そう思い、空を見上げると。

 

———そこに、彼女がいた。

彼女は、笑っていた。

俺がここに来るまでのことを全て見てきたかのように。

全て知っている、とでも言うように。

彼女の口元が、動いた。

「ありがとう」と。

そう言ったように見えた。

 

結局、無力な俺は彼女の望みを叶えることはできなかった。

でも。

彼女の望みを叶えるために生きた、俺のこの生き方が、彼女のためになったのなら。

それを、彼女に伝えることができたのなら。—————

 

体の感覚がなくなっていく。もう、痛みも空腹も感じない。

彼女の姿も、もう見えない。

 

やっと、終われるのか。

 

俺は、そっと目を閉じた。

 

Rest In Peace [inspired by “人狼のための子守唄”*12]

 

 

 

「文章とは高度な遊びだ。」

誰の言葉だったろうか。思い出せないが、この言葉が強く印象に残っている。

誰の言葉か思い出せないのだから、その人がどんな意味で言ったのかも当然知らない。まあいい。自由に解釈することくらい、これを言った“誰か”も許してくれるだろう。言葉とはそういうものだ。

書き手の頭の中にある景色を、色も、音もない、文章という媒体に落とし込む。白い紙に、黒い線。これ以上にシンプルな媒体を、私は他に知らない。

 

そしてその景色は、読み手の頭の中で復元される。ただの線の集合体が、複雑な色を、音を、手に入れる。なんとも不思議な現象だ。

文章という不思議な媒体を通じて、あまりに多い制約のもとで頭の中に描いた景色を伝え合う。

これを高度な遊びと呼ばずしてなんと呼ぼう?

 

書き手が描く世界と、読み手が復元する世界は、必ずしも同じものではない。むしろ、違うところの方が多いかもしれない。さらに、読み手が違えば、復元される世界も変わってくるだろう。同じ文章で伝え合ったはずなのに、誰一人として全く同じ景色を描く者はいない。それが、この「高度な遊び」をより面白くしているのだと思う。

 

読み手の中には、どのような世界が描かれているのだろうか。そんなことを考えている時間が、私は好きだ。

 

これを読んでいる“貴方”の中には、どんな世界が描かれているのだろうか。

 

 

“貴方”がみた“僕”は、どんな様子だっただろうか。

“俺”は、“貴方”にどんな表情を見せていただろうか。

“貴方”の世界に住む“私”は、どんな姿をしているのだろうか。

 

 

そんなことを考えながら、筆を進める。

 

 

 

良い気分だ。

 

 

 

From me, To you [Inspired by “You and Me”*13]

 

 

あとがきのようななにか

 

はい!

いかがでしたか?

思ったより上手く書けなかった部分も多いのですが、お楽しみいただけていたら、これほど嬉しいことはありません。

 

とりあえず、私としては楽しく書けたので満足です。今度はもっと良い文章を書きたいですね。精進します。

 

三つの文章ですが、あえて設定がぼかされているところがあります。(私の文章力不足で表現できていないところも多分あります。反省。)これについてはあまり語るつもりはありません。ご自由に想像していただければと思います。

以下、三作の感想などを軽く。

 

一作目。

いつもと少し違う朝に心を躍らせる“僕”のお話。何度も出てくる“特別な日”という言葉ですが、何の日だったのでしょうね。”約束”は、誰と結んだものなのでしょう。実は私の中でも明確な設定はありません。(私の中での想定、というか想像はありますが、それが“僕”のものと一致しているかは、私にもわかりません。)

みなさんは、どう思いますか?

 

二作目。

人を愛してしまった人狼である“俺”のお話。ちょっと長めでした。この話がハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは、みなさんの判断にお任せします。無駄に長くなってしまったところもあり、もう少し表現力があればもっと良い感じにできたのに...と少し残念だった作品でもありますが、世界観が伝わっていれば嬉しいなあと。

 

三作目。

お気づきかもしれませんが、この作品の“私”は、今これを書いている私、Annのことです。この文章に書いてあることは、私が考えていることそのままだったりそうでなかったりします(?)。文章という媒体そのものへの愛を語ってみました。イタいですね。これを書いている時が一番楽しかったです。

 

さてさて。もう5000字を超え、読み進めている人も減ってきたことでしょう。(ここまで読んでくれた方、貴方は優しい人です。ありがとうございます。)

ここらで、この記事はしめさせていただきましょう。

 

 

それでは、またどこかで。

 

 

 

 

 

*1:HNの由来は、好物の「杏仁豆腐」から。(正確にはもう少し複雑な経緯がありますが割愛。)実はダブルミーニングですが、もう一つの由来がわかる方、いらっしゃいますかね。ヒントはTwitter ID。

*2:高一の終わり頃に初めて行ったのがSCRAPの「終わらない学級会からの脱出」。それ以来は半年に一回ペースでライトに通っていました。本格的に沼にハマったのは大学入ってからなので、実質の歴は1年ちょっとですかね。

*3:そもそもこれらが「謎」なのかっていう話は置いておきましょう。なぜかって?これが謎じゃないなら僕は「あらゆる謎が解けない人」になるからです。

*4:謎解き作品の好き嫌いはあっても、謎の好き嫌いはあまりない人です。解けるか解けないかは別。

*5:ジャズとロックが好き。ピアノとドラムを嗜んでいます。

*6:雑食。香月日輪氏と綾辻行人氏の大ファンです。(両氏はジャンルも作風も全然違いますが。)

*7:ゲームマスターも、プレイヤーもやります。一緒にやりましょう。

*8:なんで。

*9:こんなことを言ってはいますが、期待していただけるのはありがたいことです。本当に。感謝こそすれ決して悪くは思っていませんので、何卒。

*10:最近は、BGM付き持ち帰り謎なんてものもあったらしいですね

*11:https://www.youtube.com/watch?v=q-tTJlz79_c

*12:https://www.youtube.com/watch?v=waz0YopWY28

*13:https://www.youtube.com/watch?v=gkvz6l1W0g8